しろばなさんかく

ボカロと音楽のことを書いていきます

#2022年ボカロ10選 後記

 

#2022年ボカロ10選

 

※2022年ボカロ10選後記はTwitter上のコメント形式で寸評を書きました。

 備忘の為、ブログにも転載します。

※別途、Striplessレーベル『合成音声音楽の世界 2022』の

 「SONGS OF 2022」「ALBUMS OF 2022」へ一部寄稿しています。

 合わせてご確認下さい。

 

booth.pm

 

 

 

 

①最先端な関係/ジヲ

 

ボカロとは一体何者か?…シーンの黎明期から大きく横たわる問いに対し、2022年の最先端を軽やかに叩きつける一作。ボカロは人間じゃない、という根本から一切逃げることなく、互いに支えリスペクトし合う愛すべき「隣人」として描き切っている点に、自分とは異なる感覚を、新時代を見ました。

 

 

②ONE NOTE FUNK/亜歌

 

ワンノートの束縛→解放→回帰へと。美しい構成もさることながら、ボカロと人とが並び立って歌うことで、互いの出来ること出来ないことを浮き彫りにさせ、支え合いが圧倒的なカタルシスへとつながっていく。見事な演出と言う他ありません。思わず、音楽って楽しいんだな…と言葉が漏れました。

 

 

③おくすり飲んで寝よう/もちうつね

 

あからさまにフラッシュ黄金期~ニコニコ動画最初期頃をモチーフにしたMV表現なんですが、サウンドのチョイス…というか音色のパレットがクリーンに現代へアップデートされてて、脳みそがバグりそうになっちゃう。ビートがデカい。ウィスパーボイス心地よい。令和にマウス絵紙芝居やめろ!(最高)

 


④HYPERMARKET/キツネリ

 

ボカロ聴いてて久しぶりに新しいポップネスを感じた一作。ピノキオピー作品にも連なる…核心の外縁を執拗にリフレインすることで逆説的に浮かび上がらせるリリックと、シネマティックなMVの相乗が個性的。サビ始まりのロケットスタートで2分半終幕なスピード感の中で、抜群に緩急効いてるのもすごい。

 


⑤僕らは夏の匂いに溺れるだろう/?????

 

真夏の壮大な社会実験の様相を呈した無色透名祭にあって、一際興味をそそられた一作。モタって揺れるビートに、寄せては返す波のようなリフが心地よく、夏特有のじっとりした気怠さまでも描き出していきます。投稿規定の白サムネイルが図らずもいい味を出しているのも◎。作者不明。だがそれが良い。

 

 

⑥愚夏/河相遊胤

 

ここ数年のボカロシーンではひと昔前に比べてジャズサウンドの受容が変化してきていると思っていますが、2022年それを如実に感じたのが本作でした。ラテン~ブラジリアンジャズを指向する凝ったサウンドメイクは尚のこと、ボカロ的なルサンチマン/感傷が交じった硬いリリックがクールに同居するのは新感覚。

 


⑦かなわないわ/ど~ぱみん

 

エレクトロスウィング作家としても有名などーぱみん氏による異色な歌謡曲!…として捉えがちな一作ですが、そもそもエレクトロスウィングの参照源たるヨーロッパの古いジャズこそが昭和歌謡にかなり濃く影響を及ぼしている経緯をおさらいすると、解像度が如実に上がってくる気がします。温故知新かも。

 


⑧シュガーハイヴ/雄之助

 

サウンドの流行が移り変わる中、ベテランボカロPがいかにそれらと向き合うか?という重要な視点があるかと思いますが、特に取り上げたいのがこの一作。氏本来のサウンドロゴや定番曲構造を維持しつつ、冒頭のジャジーな刻みやサビ後ピアノフレーズにミクスチャーな落とし所を見つける感覚は流石の一言。

 


⑨深い刻にて/Kuroneko Lounge

 

ビヨンセやドレイクの仕事を待たず、フロア再開と共にハウスミュージックへの回帰が謳われたことは2022年のクラブ・トレンドでしたが、見事に同期してたのがこの一作。EDMを超えてきたボカロハウスから、NY・シカゴを夢想する軽快なサウンドメイクは感涙モノ。繋ぎしろを残すホスピタリティもいまや感慨深い。

 


⑩私じゃなくてよかった/ふなばら

 

初音ミクを喪ってしまったとき、その葬送の歌をうたう歌手が誰で在って欲しいのかを考えたとき、相応しいのはやはり「初音ミク」だった。。。ハイコンテクストながら、当人にとっては単純で明快で血涙の滲む帰結を、描ききる胆力に心からの敬意と弔意を捧げたい一作。この曲に出会えてよかった。